Cocky Crew Store インタビュー2 「買い付け商品について」

探し続けるスペシャルと究極の服とは

―最近気になっているアイテムや個人的に欲しいもの、店に置きたいものはありますか?

―Cocky Crew Store
気になるもの欲しいものは多分色々あんでしょうけど、頭の中にまとまってないですね。
ただ、本当に買い付けに行く時に、例えば、一般的には古着屋さんって、今回はこれとこれを重点的に集めようとかってあると思うんですけど、僕本当に0で行って、その場その場の出会いで、直感で感じて、買い付けるっていうスタンスでずっと続けてきてるんで。
だから今シーズンはモヘアが流行っているからモヘア買い付けようとか、ネルシャツが流行っているからネルシャツ多めに買おうとかとは全くないです。
本当にアメリカに行って、その場その場の空気感でやっています。

1940'sのステンシル入りのバッグ

―それで物が出てきて、「これこれこれ、これ欲しかった、探してたんだよな」みたいな出会いが?

―Cocky Crew Store
そうです。
それがあり過ぎて自分の中で整理し切れてない部分があるかもしれないですね。
強いてあげるなら、古いハンティングのジャケットとかが凄く好きなので、1870's、80'sとかの訳の分からないくらい古いハンティングジャケットはずっと探しています。
後もう一着あげるなら、フィルソンの1914年に特許を取っているジャケットがあるんですよ、プルオーバーの。
12年に特許申請して14年に特許が通ったっていうデザインのジャケット、シャツがあって、それが僕のゴールとして欲しいものではあります。
村上さんの追い求めるゴールの一つ、1914年特許のフィルソンのプルオーバーシャツ①

―それはまだ買い付けられたことはないんですか?

―Cocky Crew Store
ないです。でも買えるチャンスが、10数年前に 1回ありました。
大阪のお客さんでもありますコレクターさんが2着持っておられます。
その幻のジャケットを求めていて、その時買い逃したやつも最終的にはそのコレクターさんの手元に。
今から13年前くらいか、その時の値段で2万ドルとかっていうオファーを受けました。
今の1ドル=150円のレートで計算すると300万円ですね。
村上さんの追い求めるゴールの一つ、1914年特許のフィルソンのプルオーバーシャツ②

―13年前でヴィンテージジーンズでもないのにその金額はかなり高額ですね。

―Cocky Crew Store
そうですね。
とういうのもありますし、まあニッチなものなんですけど、そのニッチなものって、それを探す人達って相当コアな人達なんで、お金じゃない、とにかくモノが欲しい、という方が多い気がしますね。
ある程度数があるジーパンとかって、値段を比べられるじゃないですか。
だけど僕らが追っている本当に訳の分からんもんって比べる事が出来ないんで、本当に言い値で買うしかない。
お金はもうどうにかするしかない、っていう世界線ですね。
村上さんの追い求めるゴールの一つ、1914年特許のフィルソンのプルオーバーシャツ③

―先ほどのフィルソンのジャケットのようなものは、市場価格が定まってないようなモノなので言い値ってことなのですね。

―Cocky Crew Store
僕の中の究極の服っていうのは、タグがなく、古さも分からないけど、でも凄くいい、というもの。
これなら幾らでもいいから欲しいな、と思える服っていう感じですね。
ちょっと曖昧な言い方かもしれないですけど。
だから、ブランドがあるわけでもなく、その物が持っている何かに惹かれる服っていうのが一番良い服なのかなと思いますね。

―メーカーでもなく、その物が放っている雰囲気とか?

―Cocky Crew Store
はい。周りに左右されることなく自分の感覚だけで欲しいと思えるものですね。

―もっと評価されていいアイテムとか、流行っていいと思うアイテムはありますか?

―Cocky Crew Store
やっぱりそれは古い服ですね。 1930年代以前の服。
1900年代、20年代、10年代とかの古い服はもっと知ってほしいな、本当に良い服なのにって思ったりはします。

1880's~1890'sのコート

―どうしてもヴィンテージいえばリーバイス501XXの大戦期とか、最近だと Gジャン、リーバイスの1stとか、ヴィンテージスウェットとかが人気でその頃のイメージを持たれる方が多いと思うのですが、それよりももっと昔の古い服ってまだ結構あるのですか?

―Cocky Crew Store
ありますね。

―そうなんですね。
それが流行っていたり、評価されてないから、あまり買い付けられないだけなんですか?

―Cocky Crew Store
そうですね。なので、どうアプローチするかとか、どうプロモーションするか次第だとは思うんですけど。
取り扱う店が増えたら自然に注目もされますし、っていうところですけど中々そうはなってない状況ですね。

―そうなんですね。予想外でした。

―Cocky Crew Store
現存数がそもそも少ないっていうのも勿論ありますけど。

コーカサス絨毯

―YouTubeを拝見していても、ラグを買い付けられているのシーンも印象的だったのですが、人気で皆が欲しがるアイテムなんですか?

―Cocky Crew Store
いやいや、ニッチなものです。
絨毯でも専門のお店があるじゃないですか。
でも僕がやっているコケイジャンラグ、コーカサス絨毯というのは日本でもやっているところほぼないです。
ブリムフィールドに40年出店しているおじいちゃんとおばあちゃんから購入したコーカサス絨毯。※ブリムフィールドとはアメリカのマサチューセッツ州で開催されるアンティークイベント

コケイケジャンって白人って意味なんですけど、コーカサス地域って元々旧ソ連のエリア、ロシアですよね、白人じゃないですか。
白人が作った部族絨毯ということなんでよね。
なんでコケイジャンラグって言われるんですけど、まあ言ったら山岳地域の遊牧民みたいなもんですよね。

―でも、それをアメリカで作っていたんですか?

―Cocky Crew Store
いや、 そのコーカサスっていう所で作っていて。伝統工芸品なので。
遊牧民の人たちって現金収入を得る手段がないんですね。
どうするかって言うと、家畜で羊を飼っていて、家畜の伸びた毛を刈る。
そこでまずウールができますよね。
そこでウールを野山に自生している植物とかで色々な色に染めるんですよ。
編んで絨毯にして、街に降りて、それを商人に売って、現金収入を得て、現金でしか買えないものを買って、山にまた登る、戻るっていう。
それが昔からの慣習で。

―それで貿易でアメリカに来るってことなんですか?

―Cocky Crew Store
そうです。
なのでヨーロッパにもありますしアメリカにもあります。

―Cocky Crew Store
10年以上見てきて僕のゴールはここです。

―ここが好きみたいなポイントありますか?

―Cocky Crew Store
柄ですね。
この絨毯色々なモチーフの柄が入っているんですけど、この柄の中には花をモチーフにする柄だが無いですよね。
だいたいの物に入っちゃうんですけど。
ブルーの所これインディゴなんですよね。

古いブルーって結局インディゴで染められているんで。
色んな柄を見てきて最終これが一番好きかなっていう。
大きな柄でダイナミックで。
19世紀末か20世紀初頭のもので、このコンディションなんで。

―全く詳しくないのですが、手作業なんですか?

―Cocky Crew Store
ペルシャ絨毯っていうのは凄く有名だと思うんですけど、ペルシャ絨毯って設計図があって、5人~7人、大きな物ではもっと大人数で編んでいくんですね。
でも、これって 1人で技術とセンスとかで作り上げていくものなんですね。
なんでこの辺とかおかしいじゃないですか。
動物の脚が入っているんですよ。

反対にはないですよね?
左右対称とかにはならないんですよ。
色とかもこんな感じでグラデーションになっていたり、これが面白い。

―まったくデザインとかなくて、作っていって、こうしちゃえ、みたいなところがあるってことですよね。
なるほど。

―Cocky Crew Store
ペルシャ絨毯は使っている素材もシルクで元々高価で、さらに設計図を基にチームで綺麗にに作りあげるものっていう感じですよね。
なんで物は違いますけど、柄がトライバル柄、トライバル、トライブって部族なんで、ネイティブアメリカンのナバホとかに通ずるものがあります。

「奇跡の螺旋階段」

この模型は、アメリカのニューメキシコ州サンタフェにあるロレット・チャペル(1878年完成)という教会に存在する「奇跡の螺旋階段」を模したものと思われる。
その螺旋階段は高さ約6.7メートル、33段からなり、一般的な螺旋階段にある中心の支柱がないため、まるで宙に浮いているかのように見えることがその名の由来。
この模型もベースが重いわけではないのに安定的に自立する。
村上さんは、これを今年の買い付けで仕入れる遥か前の2012年に「奇跡の螺旋階段」の写真をネット上で見つけ、スクリーンショットし携帯内にずっと残していたそう。
こちらの模型は何年ごろのものか不明だが材質などから相当古い物と推測される。
エピソード含め、古いからこその雰囲気、ロマン、造形美、圧倒的にかっこいい。

instagram@cockycrewstore
online storewww.cockycrewstore.com
YouTubewww.youtube.com/@CockyCrewStore

Photo:Nobu Saito

インタビュー3(最終編)につづく


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