Cocky Crew Storeインタビューその3「買い付けと20年を振り返り」

アメリカ物の良さとは

―アメリカでも東海岸の方でも買い付けされたり、チェスターコートの紹介をされていました。トラッドアイテムもお好きなのですか?
トラッドアイテムだと、ヨーロッパ買い付けに行かれたりはしないのですか?

―Cocky Crew Store
元々ヨーロッパにも行っていました。
イギリスに行っていて、イギリスにピンポイントで古い服や懐中時計と懐中時計のチェーン。
2泊3日とかの弾丸で行っていました。

―では、アメリカだけと決めているわけではないんですか?

―Cocky Crew Store
ただ、洋服の起源はーロッパですけど、ヨーロッパからアメリカに移った移民の人達がアメリカでテーラーメイドの会社を立ち上げて、洋服作り始めているじゃないですか。
だけど、洋服の作りが微妙に違うんですね。
イギリス、フランス、ドイツなどありますけど、アメリカの古い服とそっちの古い服って微妙に作りが違うんですね。
そこも面白くて。
例えば、アメリカのサックコート、チェスターフィールドコートっていうのは、肩幅とか上半身がコンパトに作られているケースが多いんですけど、ヨーロッパ 、イギリスとかだとちょっと広かったりとかする微妙の違いがあったりします。
襟の形が微妙に違うとか、上衿が内に向いているとかがあったりして。
でもそれがアメリカにも存在しています。
なんでかというと、フランスから移民で入って来た人がアメリカでブランドをやっている場合はそこのテイストが入ったりしています。
それがやっぱりメーカーの名前に反映されていますね。
フランス語のメーカーだったり、ドイツ語のメーカーだったりというような感じがメーカー名に入っているんで。

ボストンの建物

―ではアメリカ特有のそういう古いアイテムのものが、やっぱり好きなんですか?

―Cocky Crew Store
結局のところ、アメリカに移るっていう事は何か新しいものを求めて、変化を求めて、アメリカに渡っていると思うんですね。
なので、何と言うか、色々なディテールとか細かい仕様の面白さがアメリカものには無限にあるというか。
そういう点で見ると、ヨーロッパの古い服ってほとんど同じ服しかないんです。
それって、やっぱり伝統を守るじゃないですけど、そういうところなんですよ。
保守的というか。どっちかというと。
それがずっと続いている。
アメリカは常に変化して、常に新しいものに挑戦してきたというか。
他よりここが優れているとか、そういうせめぎ合いというか、そういうのが服からも見てとれる。
それが楽しいですね。 様々な人種が集まり19世紀から最先端の文化を発信する街ニューヨークにて

20年

―2005年大阪でクッキークルーストアを引き継がれてから20年経ちました。昨今の古着ブームも古着人気が下火の時も色々見られてきたと思いますが、振り返ってみてどうですか?よくやってこれたなという感じですか?

―Cocky Crew Store
よくやってこれたなって感覚はもちろありますし、でも、常に毎日毎日やらなきゃいけないことをこなしていくじゃないですけど、その繰り返しで、今があるんじゃないかなっていうところはありますかね。

ブリムフィールドの買い付けで

―古着熱が下火の時に辞められた古着屋さんとかも多分結構いると思うんですけど、そういう時に辞めようと思われた事は全くなかったんですか?

―Cocky Crew Store
正直辞めた方って、そこまで古着が好きじゃない、ビジネスとしての古着屋さんであったのかなとちょっと思います。
僕の場合はもうこれしかやることないんで、売れないんであればこちらが変わるしかないんで、どう売るかを考える。
常にそれを考えて動くことができたんで、その多くの学びを活かしながらというか。
そういうのはありますね。
2012年のアメリカ買い付け。雪が降る中車を走らせる。

―下火だった時、肌感でやっぱりお店に来る方が少なかったり、売り上とかも低かったりもしたのですか?

―Cocky Crew Store
月の固定費しか出ないような時もありました。
でも、本当に「他責より自責」ですね。
そこの考えで動けるようになってから、 大分変わったと思います。

―自分の売り方を考えるって事ですよね?

―Cocky Crew Store
人じゃなくて自分が悪いから、何事も自分の判断で動いてると思ってるので。

―自分のせいだっていうのは僕自身も良く考えます。

―Cocky Crew Store
そうすることによって成長できるので。人間として。
2013年5月のイギリス買い付けにて。今よりも10kg以上痩せており、村上さん自身も別人(笑)と懐かしむ。

先のことと買い付け

90年代日本で古着が流行って以降大量のヴィンテージが日本に買い付けられてますが、それでもまだアメリカには数多のヴィンテージが流通しています。
いつか自分の求めるヴィンテージが無くなるのではないか、とか、どのくらいアメリカにはまだ眠っているのだろう、など買い付けに関して不安や、先の展望を思いめぐらせたりしますか?

―Cocky Crew Store
それに関しては、アメリカって本当に広い国なんですよね。
日本とかヨーロッパって国土が狭くて1人当たりの面積が狭くて、例えばですけど、引っ越しであったり、色んなタイミングで物を捨てたりとか売ったりとかするじゃないですか。
でもアメリカって広いから置いておけるんですよ。放置出来るんです。
それによって、最近よく出てくるのは、古い昔の納屋とか、古い家で放置されていた物。

そこにコロナ禍で参戦してきたような若いアメリカのディーラーやバイヤーさん達が、勝手に空き巣に入って物を盗って、例えばですが、タダで仕入れたものが何万ドルになったりした事もあって、そこから一気に始めた子逹っているんですよ。
実際に捕まった子もいますよ。
そんな感じで置いておけるスペースがあるので残っているっていうのもあるのと、後やっぱ変わり者が多いんですね。アメリカって。
何でもコレクターがいるんで、そういう人達が、例えばですけど、亡くなったっていうタイミングで物がポンと出てきたりとか。
後は映画の衣装会社ですね。
コスチュームハウスって言うんですけど、そういう所が廃業した時に物がドカンと出たりとかっていうのが、稀にありますね。

―日本全国のの古着屋さんが30年ほど、毎年、毎回大量に仕入れされてますが、それでもまだアメリカには全然あるということですか?

―Cocky Crew Store
どこでどう買うかみたいなところですね。
例えばですけど、スリフトショップに行って物があるかって言われたらもうないです。
行くだけ僕は無駄だと思っています。
勿論買えることもありますけど、その時間と労力をお金で換算して、その割合を現地の地元で頑張っている若いディーラーさんとかに払ってあげた方が物が集まりやすいですね。
で、あともうこれは本当に究極なんですけど、長時間長距離運転するってリスクでしかないんですよ。
どうしても人間がすることなんで、事故が起こったりとか、事件に巻き込まれたりとかするわけですよね。
結局僕らも生きて帰って来るのが一番重要な仕事なんで、それが出来なくなる可能性が出てくる、高まるんで、僕は好きじゃないんです。
昔はやってましたけど。

―ディーラーさんをまわって買わせてもらうのが一番良い買い付けスタイルということですか?

―Cocky Crew Store
ディーラーさんにお金を払って、チャージを払って、頑張ったものを評価して買ってあげるっていうのがベストなやり方かな、と僕は思います。

-ここ何年かは円安、アメリカの物価高で、古着屋の皆さんが買い付けの際の経費の面などで苦しまれたと思うのですが、逆に言うと昔はそうでもなかったのですか?
今と比べるともっと余裕のある買い付けができてたんですか?

―Cocky Crew Store
う~ん、今も昔もそんなに変わらないですよ。
特別贅沢しようという気持ちもないですし。
ただ、最低限の食事をとらないと、それはそれで食事って歳を取った時に出るじゃないですか。
それはそれで健康のリスクなんで、だから僕は昔からそこをあまりお疎かにはしないタイプではあるんで。
先を見るとそこは保険なんで、とは思います。
もちろん為替とかの影響もありますけど、でも、結局泊まるホテルは変わらないですし。
凄い激安の所に行くわけじゃないんで。

―昨今、古着屋を始められる若い方って多いと思うのですが、そういう人が買い付けに行くとなった時に、別にとても厳しい買い付けスタイルを選ばなくても、普通に店として回していける道も全然ありえるわけですよね。

―Cocky Crew Store
最初からそういう風に、そうすればいいんだと思ったら、そう出来るじゃないですか。
厳しい方向でしかできないって捉えちゃうと、そうでしか出来ないんで。
発想の転換というか。

―じゃあ贅沢まではいかないですけど、普通にご飯食べて、ある程度の労働時間で買付してきて、普通にお店でやれるっていう。

―Cocky Crew Store
やれるようにどうすればいいか、そこを考えるんですよね。
どう売るかなんですよね。
どう見せるか、どう売るか、だと思うんで。
なんで、今ってやっぱりSNSの時代ですし、YouTubeで自分で自分を発信することが出来るんで、セルフプロデュースが容易にできる、それが得意な子が伸びている子たちなんですよね、結局。
若い子で凄い伸びている子たちって大体そうなんで。
古着屋さんも、例えば僕らより上の世代っていらっしゃるわけで25年、30年選手っているわけで、そういう人たちがどう変わっていけるかによって、今後生き残れるかどうかって結構大きなターニングポイントかなと僕は思ってますね。

最後に

―Cocky Crew Store
YouTubeとかSNS観てると思うのですが、推し活時代じゃないですか。
この仕事もある種の推し活んですよね。
ただ、「物」も勿論大事なんですけど、どこまで「人」で売れるのかっていうのは重要視してますね。
人(売る人)→物(物の良さ)→サービス(価格)という順番が僕の基準、仕事の優先順位なんですね。
安いお店っていうのは、価格がまず一番の優先で、次に物がきて「サービス→物→人」で「人」はほとんど関係ないよっていう優先順位。
レギュラーの量販店は。
それとは違い「人→物→サービス」っていうのが僕の売り方というか目指している所ですね。
だから村上君が売っているから村上君が買い付けてきたから買いたいよ、っていう。
僕の個性と接客であったりとか信用であったりとかが重要かなと思っていますね。

―Life,Fashion
それで従業員を雇われたりしないんですか?自分で売りたいという事ですか?

―Cocky Crew Store
そうですね。
そこまで熱意がある方がいればいいんですが、結局任せることが出来ないんで。

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