STRAY SHEEP 取材/初回 これまでの出店経緯と繋がり、広がり

ヨーロッパ古着とアメリカ古着。
トラッドとカジュアル。
これらを比較して、アメリカンカジュアルにはないヨーロッパ古着ならではの魅力についてお話をお聞きしたいと思い、2025年の冬に千駄ヶ谷店をオープンさせたストレイシープさんに取材させてもらいました。
聞きたかった事に対する予想を良い意味で裏切られる答えが聞けたことも嬉しかったのですが、話を聞いている最中や記事の編集をしているうちに、それ以上に表現したいこと、伝えたいことが見えてきた時の方がより嬉しく感じました。
筋書き通りにはいかない、想定外のライブ感にワクワクしました。

ご縁

―Life,Fashion(以下省略)
千駄ヶ谷店オープンおめでとうございます。
ブログで「念願の路面店」というワードを拝見したんですが、東京に出てくる時に最初から路面店っていうのは難しかったのでしょうか?

ストレイシープ世田さん(以下称略):ありがとうございます。
いや、それも考えたんですけど、その前に川崎の商業施設さんからお話しを頂いて、条件も良かったのもあって、色々考えてそこでやってみようと。
川崎っていう場所をあんまり理解していなかったんですけど、川崎のアンティークイベントに出たことがあって。
あとはストレイシープもよく出店している代官山蚤の市の主催をやられている方が、その商業施設のスペースを手掛けておられて、アンティーク屋さんを何件かまとめてアンティークスリートを作ろうという計画の中で私も誘われて。[閉店したストレイシープ川崎店前の通り]
ただ僕以外の他の三店舗が半年で出ちゃったんですよ。
それでアンティークストリートの計画はなくなっちゃいました。
残って川崎ではずっとポツンとやっていたんですけど。
そしたら1年後ぐらいですかね。まさかの有楽町の阪急メンズ東京さんに声をかけて頂いて。[閉店したストレイシープ川崎店のエントランスとショーウィンドウ]

―有楽町のお店は絶対お誘いがないとみたいな感じですよね?
凄いメジャーな百貨店にポップアップとか期間限定じゃなく常設で古着屋さんが入るというのは意外でした。

思いもよらなかったんですけど、たまたまお客様でアドバイザーの方がいまして。
よかったらどう?っていう。

―アドバイザーって赤峰さん(※)ですか?

はい、赤峰さんです。
※赤峰幸生氏。ファッションディレクター・服飾史研究家・「Akamine Royal Line」を展開する服飾デザイナー。日本のクラシックファッションにおける文化を牽引してきた立役者。

―川崎も有楽町もお声がけ頂いたご縁とタイミングで是非といった感じだったんですね。

そうですね。
なかなか有楽町のそんなところでやるチャンスはこないだろうなと思いましたし、そこがリニューアルという形で、ダブルアールエルさんだったり、ナイジェル・ケーボンさん、デンハムさんなどのお店が並ぶ中にヴィンテージショップを入れるというフロアを作ったんですよね。初めて。
それに赤峰さんが関わっていて、本物のヴィンテージを入れようってことで、声をかけて頂いて、うちもタイミングが良かったのもあって入らせて頂いたのが2019年の3月ですかね。
ストレイシープ オーナー世田さん

―その頃は丁度ヨーロッパ古着も盛り上がってきている時で、YouTubeも流行りだして、有楽町で色々なイベントもされて、結構なインパクトがありました。あそこでっていうのは。

その2,3年前からイベントは出店していたんですよね。
特に川崎にお店を出してからは名前を売ってこうってわけじゃないですけど、色々ヨーロッパ古着を知って頂こうと思って、川崎の店も勿論やりつつ結構イベントに出店していました。
川崎店をやる際に住まいも川崎に引っ越して、まずは川崎でしっかりやってみて今後考えようと思っていたら、まさかの有楽町店をオープン出来たのは、もちろん赤峰さんにお世話になりましたし、その他にも、講談社の方とかのYouTubeに出させて頂いて、いろいろ広がりがあって、ヨーロッパの古着を新鮮に見て頂く方が増えたのは、凄い僕ら的には嬉しかったですし、本当にびっくりしましたね。

―川崎とか東京側に店を出そうと思った時には、ゆくゆくは他にも何店舗かという展望はありましたか?

全くなくて、とりあえず水戸と違うところで1軒やってみたいな、くらいで。
水戸で店を始めたのが2009年でそこから10年近く経っていたんで、そろそろもう一店舗をやりたいなと思っていて、茨城で二店舗っていうのは現実的ではあったんですけど、お客さんも似てるかなと思って。
東京のイベント、代官山蚤の市とかも水戸の時から出店していたので、色んなお客さんに見て頂くためには、やっぱり人の多いところに行きたいなとは思っていました。
そしたらご縁があって声かけて頂いて。
まずはとりあえずやってみようという。
あまり計算せずに川崎は始めましたね。

ストレイシープ千駄ヶ谷

―では川崎から今度千駄ヶ谷っていうのは何かご縁があったんですか?それとも満を持した感じで?

有楽町をやってから路面店を一店舗やりたいなぁ、と。
というのは商業施設の中っていうのも、やっぱりルールが勿論あった上でやっているので。
水戸では路面店でやっていたわけで、東京でもやりたいなっていうのはずっとあって。
忙しい合間に物件を見たりとかはしていたんですよね。[ストレイシープ千駄ヶ谷 店内(以下続く)]

―有楽町店がスタートしてから、もう探しつつというか、やりたいなという気持ちはあったんですか?

ずっとあったんで、例えば浅草エリアとか合間合間で色々見たんですけど、その時年間5ヶ月ぐらいヨーロッパに買い付けに行っていたので、中々現実的には難しく。
ようやくここでとしっくりきたのは、「VINTAGE TREASURES」というイベントを毎年やっているのですが、去年の年末(2024年)北参道で2回目を開催した時に、この辺のお客様たちが、凄く色々しっかり見て頂けるなと思ったのもあったので、そこからこの辺で探すようになったんです。

―そのイベントがきっかけだったんですね。

イベントもありましたし、後はお世話になっていた「NEXUSVII.(ネクサスセブン)」の今野さんからも「このエリアはいいよ」っていうのはお聞きしていました。
他にも知り合いの「SUPER 8 SHOES(スーパーエイト)」(※)さんも仰ってたんで。
それで千駄ヶ谷で探していたら、たまたまここが空いたっていう話を、今年の3月にお聞きしまして、見に来ていいなと思って。
そしたらたまたま審査が通ったので、開けるまで時間がかかっちゃいましたけど、実は4月からもう借りています(笑)
※ヴィンテージシューズをメインにオリジナルレザーシューズも扱う千駄ヶ谷のショップ。

―そうなんですね。笑

川崎を閉めないとここが出来なかったという経緯があって。
僕には三店舗分の仕入れの能力もないですし、人を三店舗分配置するっていうのが出来なくて。
店の大きさもこのぐらいが理想だったんで。
しかも一階で条件が全部揃っていて、家賃も自分の想定内だったんで、もうここにしようと思って決断しました。

―百貨店は路面店と違ってルールが厳しかったりするんですか?

例えば壁に穴を開けたりとかは出来ないですし、営業時間も勿論決まっていて、営業時間のルールもあります。
あとは買い付け時閉めることはできないので。
色々な規制が多少あります。

―水戸の路面店でやられていたことを、また東京でやりたいということですか?

ここは自分が水戸でやってきたことっていうか、原点回帰じゃないですけど、やっぱり自分が仕入れているので、直接お客様に仕入れた物の魅力を伝えてお売りするという形を水戸ではずっとやってきていて。
それが有楽町と川崎をやることによって、例えば、スタッフの配置や、二店舗分の仕入れを常に考えながらとか、それとは別に経営のことも勿論やらないといけないですし。
その辺が理由で僕が現場から離れていたのは正直事実で、たまに土日に各店のヘルプに入るみたいな感じになっていたので。
店的にはかなりレアなキャラクターになっていたと思います。

―有楽町店は百貨店というのもあってドレス寄りというか、テーラードジャケットやビジネスでも使えそうなコートなどの印象が強く、川崎店は幅広くカジュアルもミリタリーもといったラインナップの印象でした。その川崎店がこの千駄ヶ谷に移転してきたという商品構成なのでしょうか?

私が好きなもの。
川崎店のものをそのまま持ってきたというわけではなくて、私自身がメインで立つので、僕自身が本来、本当に好きなものをここに置いています。
特に古いものが多いんですけど、中にはこういう新しいものもあります。
[イギリス、フランスの中綿、ダウンジャケット]

―そういうコンセプトがあるんですね。

今有楽町の店を実はカジュアル化していて、70年代以降のものを増やしています。
分かりやすいもので言えば、リーバイスはUK製のデニムとか、後は、バーバリーのコートも80年代以降のものはあちらで、古い物はこっち(千駄ヶ谷)にしています。
古いマニアックな物はこっちで、私が説明して販売したいなと。
あっちは言わずと知れた名品というか、それを並べて分けようかなと思ったんですけど、ちょっと上手く分けられるかどうか…(笑)

―サックコート(※)はどうなんですか?
※1840年代頃にフランスで誕生し、1860年代には紳士の街着として普及したジャケット。
4つボタン、小さめのVゾーン、絞りがないウエスト、裾に向かって丸みを帯びたラウンドカットなどが特徴。

サックコートはこっちに入れます。
今もここにちょっとあるんですけど、小さいんですよ。
やっぱり当時の平均身長が165センチとかなんで、小さいのが多いんですよね。

―サックコート以外にも古いテーラードジャケットは?

とかもこちらで。
有楽町店は今若いスタッフに変わっているんで、20代の子たちにその古いものを説明して売れっていうのはちょっと酷かなと思って。
引き続き有楽町には、百貨店に合うようなものもご用意したいなとは思うんですけど。
細部のディテールだったりとか、より説明が必要なもの、特に古い物とかは、私が仕入れている本人なので、こちらで説明してお売りしたいというのはありますね。

ストレイシープ・オーナー 世田さん

ストレイシープと言えばヨーロッパ仕入れのヨーロッパ古着ですが、2009年にお店を始められる前から、世田さん自身ヨーロッパ古着が好きだったんですか?

そうではなくて、20代の頃アメリカに凄い興味がありお金を貯めてアメリカを放浪していた時期があって、それでアメリカも一通り自分なりに見て、その後にヨーロッパもちょこっと行った経緯があって。
それでアメリカとヨーロッパ、最初半々ぐらいでやろうかなと思って水戸を始めたんで、当初お店を始めて2、3年はアメリカにも行っていました。

年に3回買い付けに行くとしたら、アメリカに1回、ヨーロッパに2回という感じで行っていたんですけど、アメリカに行けば行くほど、やっぱり同業の方が一杯いらっしゃって。
先駆者もかなりいらっしゃる世界に僕が入り込む余地っていうのは、本当に狭き門なのかなっていうのは行けば行くほど感じていました。
一方で、ヨーロッパに行くとまだまだ同業者が少なかったですし、自分なりにゆっくり商品を選べたっていうのがあって、今後開拓の余地があるなと思ったのは、ヨーロッパだったんで、そこから震災があった2011年以降からはもうずっとヨーロッパに行くようになりましたね。
年3回は必ず行っていました。
川崎店がオープンしてからは仕入れに行く時間が増やせたので、そこで年4、5か月行くようになりましたね。
行ったことがない場所に行くのが好きなので、新規開拓でどんどん広がっていきましたね。[POP UP打ち上げシーン。ちなみに世田さんはビール好き。]

―それでヨーロッパ古着の魅力にハマっていくんですか?

そうですね。
それでハマっていったというのも勿論ありますし、知らない世界がいっぱいあったので、最初はメジャーなロンドンとかパリとか首都しか行かなかったのが、そこに行っていると情報を仕入れられて、地方にもアンティークマーケットあるよ、とか、持っている方がいるよとか教えてくれて。
買い付けに行く度に、必ず新規の行ったことのない所を見つけたりするようになって、それがどんどん広がっていきましたね。

だから、決まったところをルーティンで行くっていうのも勿論あるんですけど、先ほど言った通り元々旅をしていたのもあったので、その延長線上で、新規の行ったことのないところに行くと、新しいものにも出会えるし、新しい人にも出会えるから気分がワクワクしますし。
僕にはそのスタンスが合っていて、結構長く、仕入れは3週間~1カ月とか、一回の買い付けで行っています。
―行ったことのない所や知らない人に出会ったりするのが好きなんですね。

そうですね。やっぱり刺激があるんで。

ヨーロッパ古着におけるイギリスとフランス

長くヨーロッパの色々な国に行かれていると思うのですが、好きな国、古着として好きなアイテムがある国はどこですか?
やはりフランスとかがメインですか?

そうですね、イギリス、フランス…
個人的にはイギリスの方が好きなんですけど、イギリス専門とかでやられているお店レベルではないんで、各国の自分がいいなと思ったものを取りいれてやっていますね。

―イギリス、フランスだと、それこそお店に置いてある古いものだとどの辺ですか?

インディゴ染めのリネン素材のジャケットですかね。

―やっぱり漏れなく、フランスのそういう昔ながらの古い素材のものはお好きなんですか?

そうですね。
やっぱり今じゃ再現できない生地だったりとか、全然違いますし、そういうものに出会えるとテンションは上がりますよね。

―イギリス、フランスがメインで特にイギリスのほうが好きというのは、イギリスの長い服の歴史からですか?

圧倒的にイギリス人の方の方がお洒落なような気がします。
個人的にはですけどね。
ヴィンテージを自分なりに楽しんで取り入れていて、個性が勿論ありますし、服を楽しんでいる文化をイギリスで一番感じます。
だから行くと、人からの刺激はイギリスが一番ありますね。
ヴィンテージを自分なりに一点入れていたりとか、お洒落な着こなしをされている方をよく見ます。
もちろん全身の方とかもいるんですけど、例えばロンドンは、地下鉄乗っているだけでもお洒落だな~って。
パリも勿論いるんですけど、イギリスの方がより多いかなという感じがしますね。[2024年春の買い付け、クラシックな建物な中で]

―イギリス、フランス以外だとどの辺の国ですか?

オランダ、ベルギー、ドイツ、イタリアに今は行っています。
メインはイギリス、フランスで多いんですけど、オランダ、ベルギー、ドイツも結構行くようになりましたね。

―行ってる中でもイギリス、フランスあたりはやっぱり好きだなという感じですか?

そうですね。やっぱり歴史のある国ですし、洋服の文化も昔の物のから今の物まで幅広くありますし。
また色々市場があるんで、そういうマーケットとかには極力行くようにしていますね。

広がっていく、繋がっていく

イギリス、フランスの方が古着屋の軒数、蚤の市をやっている件数も多いんですか?

蚤の市の文化が昔からあって、定期的にそういう市が決まった場所で毎週土日行われていたり、平日の火曜日でも開催されているマーケットがあったりとか、それで古いものを持っている人が集まるイベントとかもかなりあるので、毎日のように至るところでやっているんですよ。
今はインターネットで調べられますし、あとは1個いくと、俺違う所でも出ているんだ、と教えられてそこに行ってみたりすると、また新しい出会いがあったりします。

―先ほど仰っていましたけど、そういうどんどん繋がっていくじゃないですけど、

そうですね。
色んなイベントのチラシがそこに置いてあったりして、それを持って行くと、「あ、この日いけるな」とか。
行けば行くほど、情報は広がって、行けるところが徐々に増えて。

―そういう広がっていくのが、やっぱり楽しいということですか?

そうですね。楽しいですね。
どこを選ぶかは自分次第なんですけど、スケジュールにも勿論よるんですけど、
極力行ったことないイベントは行きたいなって個人的には思っていまして。
あとは行ったイベント(蚤の市など)に出店している古着屋さんの実店舗をまわったりとか、例えば、リサイクル屋さんをまわったりとか、結構ありとあらゆる色々な手段で仕入れていますね。
イギリスだとロンドンのホテルに拠点を置いて、例えば、ロンドンの朝から始まるイベントに行って、午後は地方の都市に行って、その日の買い付けが終われば、アイリッシュパブでお酒飲んで帰ってくるみたいな、そんなスタイルですね。
たまに地方で泊まったりする時もありますけど。[2019年買い付け、地方都市で大当たり後ローカルなPUBにて]

―経験がない人からすると、1人で行って積極的にアプローチして開拓していくのは相当なタフさや強さがないと難しそうなのですが、旅をされていたという事や、長くやってこられている、もう慣れなのでしょうか?

慣れたもんですね。
特にイギリスは、僕の中学レベルの英語でも話を進めちゃえるところがあるし、フランスはフランス語を喋れた方が絶対良いんですが、それでも僕の大したことない英語でも伝わったりするので。
毎回結構な数の都市を行きます。電車網も発達しているので、日帰りでも帰ってこられるルートを組めるというのも、イギリスの魅力なんだと思います。[イギリス買い付け時によく立ち寄る「The White Horse」にて]

photo:Nobu Saito、masanori seta(STRAY SHEEP)、STRAY SHEEP staff

STRAY SHEEP 千駄ヶ谷 instagram@straysheep_sendagaya
STRAY SHEEP 有楽町 instagram@straysheep_yurakucho
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