STRAY SHEEP取材②ヨーロッパ ヴィンテージ
フランス
―ヨーロッパ古着はアメリカ古着と対比されることがあると思うんですけど、ヨーロッパ古着の好きなアイテムを教えてもらえますか?
世田さん(以下省略)
アメリカと同じくタフな物が結構好きで、生地がしっかりしたもの。
こういったモールスキン(※)とか。
※モグラの毛皮(mole skin)が名前の由来。綿を原料とし、非常に丈夫で耐久性に優れている。厚手だが肌触りが柔らかい。使い込むほどに色落ちやアタリが出る。
―モールスキンってヨーロッパらしいんですか?
そうですね。
フランスが中心かとは思うんですけど、ドイツ、オランダ、ベルギーとかでもモールスキンの古着は見つかります。
ドイツだと生地が分厚いものが多いです。
―数見ていると、これはフランス、これはドイツのものって大体分かるようになってくるんですか?
そうですね、作りとかで。
例えば、ここにボタンがないとか生地感とかで分かります。
これはオランダのモールスキンなんですけど、フランスではないんですよね。
フランスっぽいですけど。
そういう違いも、ちょっとしたものなんですが。
―ヨーロッパは陸続きで小さい国が集まっているイメージが強いですが、それでもその国独自の形や素材、ディテールがある程度あるんですか?
ありますね。その細部の違いも面白いし。
特にフランス、ベルギーなんて、もう本当に電車で1時間半ぐらいで行けるところで、ちょっとしたものが違ったりとか、そういったのも面白いです。
―例えば、フランスはリネンが強いみたいなのも?
そうですね。リネンはベルギーもそうですけど、リネンとかモールスキンとか、あと、例えば、こういうコーデュロイ。
この辺はフランスらしい。
―逆に言うと、イギリスだとリネンとかそういうコーデュロイは、あまり見つからないんですか?
そうですね。
イギリスだとリネンは中々見ないです。
コーデュロイはあることはあるんですけど、古いものではなかなか見つからないですね。
―こちらは?
フランスのインディゴリネンのダブルブレストです。
通称「メティス(※)」って呼ばれるコットンがちょっと混じっている素材かもしれないのですが、表記でリネン100%とかって配合が書いてあればいいんですけど、書いてないものがほとんどで。
※主にコットンとリネンの混紡生地を指し、特にヴィンテージのフレンチワークウェアで用いられることが多い。混紡の比率は様々でインディゴ染めされたものもある。
(売ってくれた人からは)リネン(のみ)って言われたんですよね。
ダブルがいつのまにか値段が凄いつくようになっちゃって。
年代は30's~40'sぐらいの、大戦ちょっと前くらいのものですかね。
[ネップが混じる生地、素材感が圧巻]
―その隣の素材はどうですか?
[凄まじく美しい色落ち]
これはリネンだと思います。
これも先ほどの物も両方ともイギリスで逆に見つけました。
―トレードされて、イギリス、フランス、国に関係なく行ききしちゃっているんですね。
そうですね。
売ってくれた人もフランスで見つけたらしいですけど、イギリス人もこういう古いものを持っていらっしゃる好きな方とか、商売でやっていらっしゃる方もフランスに仕入れに行ったりもしますし。
そういった方によく仕入れ先でも会います。
イギリス
―この間Instagramで「CC41」のタグが付いたグレーのジャケットがかっこよくて、値段も高くなかったので狙っていたのですが、買えずで…
しかし「CC41」なのにそんなに高くないんだと驚きました。「CC41」はアメリカで言う大戦ものみたいなことで良いんですか?
これは、1941年から1952年までイギリス政府が戦時中の物資不足に対応するため導入した「物資統制」規格のマークなんですよ。
ただ、その時の服が面白いデザインのものが多かったりするんですよ。
―アメリカと同じような意味で通常よりも色々省かれたりしているんですか?
ポケットがなかったりとかそういう制約があるんですけど、当時ならではの生地だったりとか、面白いものが多い気がしますね。
―それでもこういう生地がしっかりしているものとか、重厚感のあるイテムだと値段が高かったりして、ピンキリなんですか?
ピンキリだと思いますね。ただデザイン性が良い物は、ロンドンの古着屋さんとかでしっかり値段がついています。
―ヨーロッパ古着好きな人からすると価値があって、このマークがあるとマニアな人は唸るようなものなんですか?
知らない方が多いんじゃないんですかね?
「CC41」だから良いっていう物でもないですし。
―結局は見た目がいいかとか、そういうことなんですね。
基本的にはそういう感覚で、CC41でもあんまり自分的に置きたくないと思ったら買ってこないですし。
なんでも買ってくるって訳じゃないです。
あと靴とかCC41のマークが入ったものもあるんです。
後はシャツだったりとか、スーツとかもありますね。
―イギリスらしいですね。アメリカだとデニムジャケットとかしかイメージないですが。
贅沢するなよ、とデザインで華美な物を作るなって言ったわりには、面白いものがあったりするので、個人的には見たら「おっ」っていうものが中にはありますね。
―例えば、このコートってその「CC41」で何を省いているんですか?
胸のポケットくらいじゃないですか?
―昔ならではの凄い重厚感のあるツイードを使ってますね。今から見ると全然贅沢な感じですし。
贅沢ですね、作りしっかり良いですし。
―これはどういうアイテムですか?
イギリス空軍の「コールドウェザーパーカ」です。
多分1950's~60'sぐらいのもので、素材はベンタイル、高密度のコットンですね。
よくナイジェル・ケーボン(※)さんが自身のブランドでデザインする物のベースになっているもので、そのグレーカラーのタイプはボンバーグルーと言われる爆撃機の乗組員に支給された極寒地用です。
めったに出ないんですけど日本人サイズが出たので買ってきました。
※自身のブランド「ナイジェル・ケーボン(NIGEL CABOURN)」のデザイナーであり、世界的なビンテージコレクターとして知られる。「バブアー(Barbour)」や「アルファインダストリーズ(ALPHA INDUSTRIES)」などのブランドで、デザインコンサルタントを務めてきた。
―(資料の雑誌を見せてくれて、載っているものと)これ全く一緒ですか?
載っているものはナイジェルケーボンさんの私物なんですけど
―軍物だとこういう風に資料としてあるんですね。
そうですね。これはナイジェルケーボンさんが色々私物を紹介してくれているやつで。
―載っている物よりお店の物の方が状態良いですね。
これはたぶんほぼデッドだと思います。
ここにブロードアローのタグが…
―ブロードアロー(※)!すみません、全然詳しくなく聞いたことあるような位なのですが、ブロードアローってなんですか?
イギリス軍のマークっていうんですかね。
それも年代によって形が若干違って。
※イギリス政府の官有物であることを示す矢印形のマーク。17世紀末頃から軍用品に用いられ、20世紀を通じて武器や衣料品など数多くの製品に刻印された。
―普段はアメリカ物のアイテムの名称ばかり見聞きしているので、聞き馴染みない、新鮮な名称やアイテムの通称がどんどん出てくるとワクワクします。イギリスの~とか、フランスの~とか、きっとアメリカ物ほど有名ではないものが結構あるんですよね?
まだ知られてない物も多いと思います。
徐々に日本の雑誌社が資料になるような物を出したり、ナイジェル・ケーボンさんの私物とかで出てたりするんですが。
―やっぱりナイジェル・ケーボンさんって相当いっぱい持っていて、めちゃくちゃ詳しいんですね。
詳しいと思います。
もう昔から追いかけておられて、ヨーロッパ古着、特にイギリスのミリタリーを日本に知らしめた第1人者はナイジェルケーボンさんだと思います。
自身のブランドは、イギリスのものをベースに色々落とし込んで作られていると思うんですけど、いち早くその魅力に気づいて、80年代前半ぐらいからもう収集されていて。
まあ今じゃ仕入れられないようなものも持ってらっしゃると思いますし、そういうのを落とし込んで作られた洋服が日本の店にも色々と置いてあると思いますけどね。
日本は遅かったと思います。
イギリスのこういう魅力に気付くのが。
僕ら20代の時は、そういった服、世間的に見なかったと思います。
―その事についても聞こうと思っていました。ヨーロッパ古着には、まだあまり有名になってない、もっと知られていい、評価されていい、人気が出ていいアイテムが結構あると思われますか?
あると思います。
それを今日本のブランドさんが研究して、今に落とし込んで作っておられますし、この辺(千駄ヶ谷周辺)の近くのブランドさんも何社かいらっしゃいますし。
―そうですよね。それで言うと例えば、世界の服の流行を牽引するパリ・ミラノとかのファッションウィークのブランドは、当然アメリカよりヨーロッパの歴史に基づいた物をベースにして作ることの方が多いですしね。
そうですね。
年々日本でもそういうヨーロッパを意識して作る服が新品のブランドさんで増えてきたような気がしますね。
二度と見られない(かもしれない)級のスペシャル
―今店頭にあるアイテム中でどれが一番好きですか?
スペシャルで言うとこれでしょうね。
バーバリーの1910’s~20’sのレザーのジャケットです。
―これバーバリーなんですか?
タグ見て頂くと、ほぼ消えているんですが、バーバリーと。
実はフランスのパリで見つけたんですけど。
これは出てこないかなと。
―これなんですか?ポケット?って思っちゃいますけど、
何の意味があったのか…
レザーでアヴィエーターコートとかそういう感じのを意識して作ったのか。
―てことは、軍用で?
軍用ではないと思うんですけど。
―アヴィエーターってパイロット的な?
そうです。パイロット的なことかなーっと思ったんですけど、ちょっとこれもまだ資料がないので、どういった用途で作られたかとか、まだ不明なんですけど、これは恐らく、見たことない方は多いかなと思いますね。
これは多分出てこない、この並びの2つとかは特に出てこない…
―こちらはなんですか?
仕立てで有名なイギリスのサヴィルロウにあるハンツマンが、インド出兵時の兵士に向けて、恐らくオーダーで作ったレーザージャケットです。
サイズは小さいですけど。
―これは軍事用とかではなく普通の普段着ですか?
普段着だと思いますね。
お偉いさんがオーダーして作ったようなもので、ハンツマンが作ったんですよね。
―ハンツマンなのに、全然テーラードっぽくはないわけですもんね?
そうですね。こういう物も作ってたんですね。
一応ラぺルがあったりするんですが。
これは本当にビックリしました。
イタリア
―イタリア物ってあんまりお店にないんですか?
少しだけあります。今イタリア開拓中でして。
―個人的にはイタリアものってあまりイメージないんですよね。
そうですね。イタリアの古い物って世間的にもイメージないと思うんですよね。ブランドのアルマーニとかそういうイメージが強いと思うんですけど。
―歴史的、文化的にもそこまで服の文化が強かったわけではないんですかね?
そうだと思います。70年代以降じゃないですかね。
なのであんまり古い物とかは…
古い物だとこういうジャケットとかだけですね。
これは40年代頃の品かな。
コットンでコットンギャバっていうのかな。
コートとかでよくありそうな生地ですよね。
ハンティングなのかな~とは思うんですよね。
ハンティングでしょう。
―(お店で付けたタグを見て)これはミリタリーってなってますよ?
売ってくれた人はミリタリーコレクターなんですよ。
その人が言うには…
ただ資料がないんでこの辺は不明なんですよ。
―ヨーロッパ古着を扱っているお店も、イタリアものは(ないですか)?
最近は若い子とかがCPカンパニーとかストーンアイランドとかやっていますけど、ただ古い物はやってないと思います。
イタリアの古い物って、残ってないとは言われるんですけど。
そういう昔の物を持っていらっしゃる方は、最近繋がってきたんで。
ミリタリーが多いですけどね。
ミリタリーコレクターは世界中にいて、まだ沢山持っていたりします。
売ってくれないものも勿論ありますけど。
ヨーロッパヴィンテージ、トラッドって
ツイードとかはうちらしいかも。これは古いです。
1940'sぐらいのハリスツイードジャケット。
何着かうち古いツイードあるんで。
有楽町店は70年代以降にしていて、こっち(千駄ヶ谷店)は古い40年代、50年代のツイードにしています。
―シェイプが効いていてセクシーですね。
イギリスの40年代ぐらいですかね。形的に。
ツイードはイギリスらしいですかね。
イギリスの30’s、40’sマニアの人とか古い物が好きな人は、 こういう赤味のあるブラウンカラーのツイードジャケットを通称「Ginger Tweed(ジンジャーツイード)※」って呼んでます。
※赤みがかったオレンジ色のような温かみのあるブラウンカラーのツイードJK
―ツイードだとグレーのイメージとかあるんですけど、ブラウンだとジンジャーと言ったりするんですね。
マニアな人は昔の生地を使ってジャケットを仕立てたりしていますね。
ヴィンテージで中々自分のサイズないんで。
ウチのお客様でもそうして仕立てている方がいらっしゃいました。
東京にもイギリスのそういう古い物マニアみたいな人がいらっしゃるので。
―イギリスの人って、やっぱりテーラーとか、
伝統的なものを着る傾向があります。
バブアーとかもそうですし、親の着ていたバブアーを引き継いで着たりとかそういうのはあるようですね。
バーバリーとかもそうですし。
―昔はこういうのが、冬だと日常着ということですよね?
ですね。重いコートとかツイードのコートとかありますし。
今絶対作らないような、かなり重い物は50’sくらいまででしょうかね。
今の人には合わないと思うけど、あえてやりたいな…みたいなのは(笑)
―同時に贅沢な素材とも言えるわけですね。
今じゃ考えられないですよね。今は軽くて暖かい物が多いですよね。
―でもこのぐらいの重さだったら。そんなに重たいとは思わないですけど。
いやいや、やっぱりウールの長いコートとか着る人は減ってるとは思います。
短丈とよく言われます。
そういうのを世間は求めているんだなって思いますけど。
あえてこの不便なことをやりたいなっと…笑
―僕も短丈好きなんですけど、冬になるとこういう長い丈のものがエレガントで良いし、気分になります。でも、若い人にとったらあんまり…
あと田舎だと、車文化なのでこういうのを着て外に出ていく文化がないから。
―確かに邪魔ですもんね。
田舎ではきついです。
便利で軽くて短くてが求められるので、恐らく茨城でこれとかは見向きもされないかと。
田舎は段々みんな保守的になってきちゃっているから、ここら辺をやるんであれば断然東京だなと思います。お洒落して着て行く場所がここ東京にはやっぱりあるので。
つづく
photo:Nobu Saito、STRAY SHEEP staff
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